第3回 見逃しがちな、更年期障害の初期症状

初出:ラブピースクラブ 2016年3月2日

 

 

私はもともとがさつな人間で、自分の体調やきれいかどうかを、ほとんど気にしていませんでした。

生まれつき体が弱かったし、小さなころから一度もかわいいと言われたことがなかったため、いつも疲れていて、肌がガサガサで目が充血していても、「こんなもんだ」と思って放置していたのです。

まあ、どうしようもなく後ろ向きな人間です。

 

周囲の女性たちは、お茶を飲んでいても買物をしていても、鏡やガラス窓があると、ふと自分の顔を映しては、

 

「なんかブツブツできてる・・・?」

「うわ、顔色悪い!」

 

と、顔を曇らせるのですが、私はまるっきり無頓着。

「美人は大変だな~」と思って見ていましたが、今考えると逆ですよね。

美人だから大変なんじゃなくて、あれこれ気にかけているから、磨かれて美人になるのでしょう。

 

最初からあきらめて、髪や肌の手入れをしたことのなかった私は、ブスの上にあぐらをかいて開き直っていたのです。

そんな私なのに、「いや、これはなんぼなんでも酷いでしょ・・・?」と気にかけはじめたのが40代。

後から考えると更年期障害のしわざでした。

 

最初の症状は体重のコントロールが効かなくなったことです。

ちょっとラーメンや焼き肉が続くとブヨブヨと太る。

ブヨブヨです、ブヨブヨ。

30代までのはち切れそうな太り方とは正反対で、なんとも締まりのないゴムボールみたいな体になって止まらないのです。

 

体重は10kg以上増え、脂質異常症(高脂血症)も起こしていました。

脂質異常症というのは簡単に言うと、血中のコレステロールのうち、動脈硬化を引き起こす原因となる悪玉コレステロール(LDL)や中性脂肪がふえる症状です。

実は太りやすくなるのも、脂質異常症も更年期障害の症状の一つなのですが、当時の私はそんなことは知りません。

 

ここでもまた、がさつな私は「食事を抜けば痩せるじゃん」と乱暴に考え、朝昼を合わせて一食、夜はビール中心におなかをふくらませるだけ、という乱暴な減量をはじめました。

その結果、体重は順調に・・・というか急激に減少。

同じ減量をしても、若い時とはちがいます。

すごいスピードで痩せていく自分に「やればできる」と錯覚したのもつかの間、使い古して革が伸びきった古い財布から中身を抜いたときのような、汚らしい体になってしまいました。

 

無茶な減量で、全身の筋肉を痩せさせてしまったのです・・・!

(今思うと、ビールで糖質だけは摂っていたので、どんどん体内のたんぱく質と結びついて糖化させ、筋肉や皮膚を弱らせていた、ということもあったかも知れません。)

 

しかも、体重は元に戻ったのに、悪玉コレステロール値はまったく変わらないのです。

これは計算外でした。

不健康なブヨデブから、不健康なしなびた老体になっただけ・・・!

「こんなはずじゃなかった!」と落ち込み、鏡に自分の体を映しても目をそむけるしかありませんでした。

 

痩せて胸やお尻が小さくなるのはわかります。

でも、若い時に経験したそれとはちがうのです。

ヒップの丘は頂点を失ってタライを伏せたような形になり、バストもスライムのように崩れています。

 

「これがババアになるってことか・・・」

 

何もかもハリがなく、痩せても太ってもグズグズとだらしない・・・。

男性とセックスする機会も減っていきました。

体を見られたくないからです。

40代後半の頃でした。

 

あの頃、もし・・・。

女性ホルモン量の検査をしていたら、エストロゲンが減少していることがわかり、女性ホルモン補充療法(HRT)を勧められていたのではないでしょうか。

体重増加や脂質異常症の原因は、もちろんさまざまあって、更年期障害だと決めつけるのは危険です。

しかし、更年期障害が起きていることに気づかず、無茶なダイエットをして体型を崩し、栄養不足でますますエストロゲンを枯渇させていく・・・

 

栄養素の中には大豆にふくまれるイソフラボンのように、エストロゲンに似た働きをしてくれるものがあります。

食事抜きをやってしまった私は、栄養も不足していたので、こういった食品に助けてもらうこともなく、どんどん更年期障害を悪化させていったわけです。

「自分は年齢よりずっとお婆さんに見える・・・」と気づいて、傷つきながら、どうしていいかわからなかったのです。

 

200以上もある更年期障害の中から、最初に「太る」と「高脂血症」と「乳房やヒップのハリがなくなる」という三つの症状のお話をしたのは、無茶なダイエットで解決しようとして、更年期障害の入り口で大きなつまずきをしないでほしいからです。

私のように、栄養不足によって、更年期障害をさらに重くしないでください。

更年期障害は、病気ではないので手術や投薬で治すものではありませんが、うんと軽くすることのできる「誰もが経験している症状」なのです。

 

女性ホルモンの代表的なものに「エストロゲン」と「プロゲステロン」があります。

40代に入ると卵巣機能が低下しはじめ、エストロゲンが減少しはじめます。

私は漠然と、「エストロゲンは排卵までを、プロゲステロンは月経までを管理しているホルモン」と思っていたのですが、エストロゲンの働きはそれだけではないことを、閉経してから知りました。

 

エストロゲンは全身に作用して、女性の健康ばかりでなく美しさをも創りだすホルモンなのです。

たとえば・・・

 

   乳房を発達させて女性らしい体をつくる

   子宮内膜を増殖させて、妊娠の準備を整える

   肌のつややハリを保つ

   自律神経や感情のバランスを保つ

   コレステロールのバランスを整えて、動脈硬化を予防する

   脳の血流を増やし、活性化する

   骨量を保持する

   抗酸化作用

などなど・・・!

 

私の体がいきなりお婆さんみたいになったのは、この①や③のせいでした。

乳房そのものが張らなくなったところに、皮膚も少しずつハリを失い、そこにダイエットで筋肉を失ったので、ヒップもバストも急激に崩れてしまったのです。

 

今、私は56歳です。

若くはありませんが、まだまだ働かなくてはいけない年齢です。

このままお婆さんになってしまっては、家族にも仕事関係にも迷惑をかけるし、何より自分が悲しくなってしまいます・・・。

更年期前半にボロボロにしてしまった体に、少しでも健康を取り戻そうと、いろいろ努力をしていますが・・・歳をとってからはじめる体の改善は、ほんとうに時間がかかります!

 

このコラムを読んでくださっている方の多くは、私よりお若いと思います。

もし、急に太りだした、健康診断で中性脂肪や悪玉コレステロールが増えていると言われた、肌荒れが治らない、などの気になることを抱えていたら、産婦人科で女性ホルモン量の検査をしてみることをお勧めします。

更年期障害は閉経より前に、少しずつ始まっているものです。

早めの検診が大切なことは成人病などと同じだと思います。

 

 

次回は実際に産婦人科で、検査と女性ホルモン補充療法を受けたときのお話をしたいと思います。